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『居住空間の匠たち』 第1回: インテリアデザイナー JCT 川勝仁さん

鉄、古材、ガラス等を取り込み重厚感溢れるJCTのデザイン。異素材を組み合わせたアイテムが空間を一変させる有効なアクセントに

"鉄"が生み出す存在感が、空間の表情を一変させる


 賃貸物件の入居率を上げるために、時代のニーズに沿わなくなったマンションやアパートのリフォーム、リノベーションを考えるオーナーは少なくない。しかし、そこで問題となるのは、やはり改装にかかる費用。費用をかければかけるほど、たしかにこだわりを具現化でき、クオリティの高い部屋を生み出すことはできる。とはいえ「それをペイするだけの収益が将来にわたって見込めるか?」というと、確固たる自信を持てないのが現実だろう。オーナーを悩ますその不安は、大胆な改装への決断を渋らせる足かせとなり、結果的に、他の物件とあまり代わり映えのない"無難な部屋"を作ってしまう、というケースは多い。

 「趣味嗜好が多様化している現代、無難なモノをつくることは、逆に『似たようなタイプのモノの中に自ら埋もれさせてしまう』ということも意味します。せっかくお金をかけてリフォーム、リノベーションを行うのですから、少しだけ勇気を出して"個性的な物件"を仕掛けたほうが、確実にユーザーの興味を引くことができるはずです」

 そう語るのは、アパレルブランド、飲食店などの店舗内装も手がける、デザイン会社・JCTの川勝仁氏。建材としては見向きもされなかった鉄や古材などの素材にいち早く注目し、数々の大手アパレルショップの内装に着手。現在の"古材ブーム"を黎明期から駆け抜けてきたインテリアデザイナーだ。そんな彼が個性的なリノベーションの例として提案するのが、"ワンポイントだけのイメージづくり"。物件のアイコンとなるような個性的なアイテムを1点だけ取り込むことで、空間の印象をガラリと変化させるという方法だ。

 「特に、私が好んで扱っている"鉄"は、重厚感があり、空間にちょっと置くだけでも存在感を出すことができる素材。焼きを入れて質感を出したり、曲線を加工してやわらかいニュアンスを出すことも可能なので、強い印象を生む"アイコンづくり"にとても効果があるんですよ」

 その代表的なアイテム例のひとつが、鉄製の門扉。マンションやアパートの顔とも言えるエントランスに取り入れるだけで、建物全体に重厚な雰囲気を与え、強いインパクトを与えることが可能になるという。また、大掛かりなリノベーションを行わずに入居者への印象を変えられるため、コストを抑えたいマンションオーナーにも心強い味方になると川勝氏は説明する。

 「また、鉄の場合、木材やガラスなど異素材との相性も良いので、様々なアイテムに応用しやすいというのも魅力的。照明やドア、ネームプレートなど内装の部分的なアクセントとしても使いやすいので、予算に合わせて容易に空間の印象を変化させることも可能ですね」

 とはいえ、鉄製のアイテムで気になるのがメンテナンス。しかし、使用用途に合わせて加工を施せば、錆をつけることもほとんどない、という。それ以上に、時間が経れば経るほど、鉄は風合いを増すため、その物件の個性にもつながっていく。

profile:1961年生まれ。武蔵野美術大学彫刻科卒業後、大学の友人らとデザイン会社、現「JCT」を設立。90年代初頭より、ヒステリックグラマー、オゾンコミュニティの店舗デザインにアートワークとしても参加。設計、施工だけでなく、オリジナルデザイン家具の制作も行う
http://www.clovi-jct.com/

"年月を経れば経るほど、味わいを増していく賃貸物件"。

 それは、コストを抑えるあまり、大量生産の建材ばかりを用い、画一的な空間を作り続ける賃貸物件市場には生み出すことのできない取り組みだ。大掛かりなリノベーションを考える前に、鉄を使ったワンポイントのイメージづくりを一度検討してみるのも手ではないだろうか?



text by Takuo Shibasaki (butterflytools)












※ 『居住空間の匠たち』と題したこの連載では、賃貸物件オーナーに向けて、"新しい賃貸物件のカタチ"を提案するデザイナー、職人たちを紹介していきます。

※ JCT川勝氏への依頼のご相談は、株式会社宅建 担当:阪本幸徳までお問い合わせ下さい。

text by Takuken Web