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『居住空間の匠たち』 第2回: ネオンアーティスト 安彦哲男さん

エントランスを"おもてなし"空間にする、ネオン管のやわらかい灯り


 マンションのエントランスとは、外から帰ってきた住人たちの気分をパブリックからプライベートへと切り替えてくれる重要な空間。最近の分譲マンションのエントランスでは、そのような役割を特に重視する傾向が強く、壁にアート作品を飾ったり、建築デザインの中に木や石などの天然素材を盛り込むなど、心安らぐ雰囲気づくりを試みるのがブームになっている。このような試みは、住居から得られる"おもてなし"の印象として注目を集め、物件を探す人たちの間でも、住居選びの際の大きな判断材料のひとつにもなっているという。

 では、一般的な賃貸マンションの場合は、どうだろうか?物件にかけられる予算には限界があるため、エントランス部分に対して、このような演出が行われることはほとんどないのが現状だろう。とはいえ、莫大なコストをかけなくても、ちょっとした工夫や意識さえあれば空間の表情を変えることは難しいことではない。その好例とも言えるのが、"灯り"の演出だ。

壁面を飾るアート作品にも、間接照明にもなるネオンアート。設置場所を選ばず、エントランスに印象的な表情を作り出せる。見る者の気持ちをやさしく癒してくれる、淡く、やわらかい色彩が安彦氏の作品の持ち味だ

 「賃貸物件のエントランスで通常用いられるのは、蛍光灯の照明。しかし、蛍光灯特有の白い光は、空間を無機質な印象にしてしまうことが多い。それらの代わりに間接照明を取り入れるだけでも、マンション全体の印象はずいぶん変わるはずです。特に"ネオン"の灯りは、色彩が豊富な上、設置場所に合わせて加工しやすいという特長も兼ね備えているので、空間演出の心強い味方になってくれるはずですよ」

 そう答えるのは、アメリカ産やヨーロッパ産のネオン管を素材に、光をモチーフにした作品を発表しているアーティストの安彦哲男氏。日本国内でこそ"居酒屋や飲食店の看板"のような商業的なイメージが強いネオンだが、実は欧米社会においては街のランドマークやアート作品にも頻繁に用いられる文化的な素材。商業店舗はもちろん、住宅内外の照明にも頻繁に利用される、生活に密着した"灯り"なのだという。

 「ネオンの魅力は、なんと言っても独特のやわらかい光を放つこと。マンションの外観やエントランススペースに1点だけ設置するだけで温かい雰囲気を醸し出せるから、家に帰ってきた時にホッとするようなやさしい空間づくりを簡単に行うことができるんです」

 その上、低電圧で発光できるインバータートランスを使用しているのもメリットのひとつ。ひと世代前までの高電圧のものより安全性が高い上、消費電力は、作品ひとつあたり 26W程度と経済的。一般的に住宅の外観に使われているハロゲン照明よりも、圧倒的にコストを抑えることができるという。

 住人たちの気持ちをやさしく癒してくれる、灯りのリノベーション。エントランスにネオンアートを取り入れて、オリジナリティあふれる"おもてなし"に挑戦してみてはいかがだろうか?

 

 

profile:1957年生まれ。大学時代から、欧米諸国を放浪。88年、アメリカ・ウィスコンシン州のネオンスクールを卒業。帰国後、ネオンアーティストとして活動を開始。光を使った空間づくりをベースに、寺院のライトアップ作品展をはじめとする数々のイベントを行っている
http://www.bico-neon.com/




text by Takuo Shibasaki (butterflytools)



 














※ 『居住空間の匠たち』と題したこの連載では、賃貸物件オーナーに向けて、"新しい賃貸物件のカタチ"を提案するデザイナー、職人たちを紹介していきます。

※ 安彦哲男氏への依頼のご相談は、株式会社宅建 担当:阪本幸徳までお問い合わせ下さい。

text by Takuken Web