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『居住空間の匠たち』 第3回:GALLUP 厚木ショールーム 末綱浩次さん

無垢材の経年の変化が、"愛着のある部屋"を演出する


 賃貸物件のリフォームの場合、使用される建材は、品質の高さやデザイン性の良さが考慮されることよりも、"何よりも価格が安いもの"が重要視される傾向がどうしても強い。

 特に"床材"の場合は、入居者が変わる度に補修、張り替えなどを迫られるリスクも付きまとうため、メンテナンスが簡単で、なおかつ低価格で手に入れられる合板フローリングやクッションフロアが選ばれるケースが圧倒的だ。

 しかし、これらの床材を使った物件は、新しく、清潔感のある状態をキープしているように見える一方で、実は、入居者に対して、画一的な味気のない印象も与えてしまう可能性もあわせ持っている。そのため、入居者に"ずっとこの部屋で暮らしていきたい"との想いを抱かせるまでには届かず、更新時期には引っ越しを考えさせてしまうというケースも多い。

 "借り手がついたとしても、次々と更新を待たずに部屋を出ていってしまう。なかなか入居者が安定しないといったケースが増えてきた"、そんな現状に心当たりのオーナーはいないだろうか?

様々な木材、加工品の床材サンプルが並ぶGALLUPのショールーム。ペイント加工を行えば、新材であっても時間を得た古材やアンティークのような風合いも楽しむことも可能だ

 愛着を持って長く暮らせられる、こだわりの居住空間を求める入居者の傾向は、家族向きの部屋ではもちろん、転勤などが想定される都合上、軽視されがちだった単身者向きの部屋においても、ここ最近、より顕著となってきている。

 つまり、「床材にコストをかけない」という従来の考え方では、逆に「安定した利益を生み出しにくい」という結果にもつながりかねないのだ。

 常にきれいな状態であるように、メンテナンスは心がけているのに、入居者が安定せず、その都度、メンテナンスの費用ばかりがかさむ。そのような悪循環を改善していくためには、やはり"コスト重視"の考え方を切り替えて、多少費用をかけても、入居者が"愛着を持てる"部屋作りを行うことが必要だろう。

 その手がかりとなるのが、今回紹介する"無垢材フローリング"を使用して、入居者が替わっても「床材をずっと使い続ける」という発想だ。

 世界各国から集めた木材、アンティーク家具などを取り扱うGALLUP(ギャラップ)厚木ショールームの末綱浩次氏は、無垢の床材の魅力について、このように語る。

「無垢材の美しさを活かすには、オイル仕上げが一番」と末綱氏。店内にはWATCO(上)やMINWAX(下)など、世界的に人気が高いオイルワックスの品揃えが豊富

「賃貸でよく使われる合板フローリングは、表面が剥がれたり、汚れがついてしまったりすると、補修作業が非常に難しい特徴を持っています。そのため、一般的なオーナーさんにとってみれば、フローリングの経年の変化は、すべてデメリットとして考えられがちです。しかし、無垢材のフローリングの場合はまったく違う。アンティーク家具のように、多少の汚れや変化はかえって"味"になるというメリットがあるんです。種類によって様々な木目の表情を楽しめますし、加工の仕方次第では通常の床材以上の強度を持たせたり、新材をアンティーク風に仕上げることだってできる。"愛着の持てる部屋"を作る上では、格好の素材だと言えるのではないでしょうか」

 中でも、賃貸物件にオススメだというのが、日本人に特に人気が高いという「新材のチーク材」。防水性や耐久性に強い上に、色目が濃くて汚れや傷が目立ちにくく、床材に取り入れるだけで、部屋の雰囲気をモダンな印象に変えることも可能だという。

 「"無垢材はメンテナンスが難しい"という方もたまにいらっしゃいますが、実はそんなこともありません。一度、オイルステインで塗装をしっかり行うだけで、室内での使用の場合なら5、6年何もしなくても適度な状態を保つことができます。念のため、契約の更新の際に床の状態をチェックするとしても、たったそれだけで安全に親しみのある空間を提供することができるんです」

 もちろん、無垢材のフローリングは、合板のフローリングと比べれば、多少費用がかさむ。しかし、このようなこだわりの部屋作りを行った物件の中には、入居者が愛着を持って15年、20年以上も暮らしているという例も存在する。しかも、長期的なスパンの契約ともなると、安価な素材を使った物件に以上にメンテナンス費用を抑えることも可能だ。

 "オーナーも入居者も一緒になって味わいを増していく部屋作りを楽しめる"。そんな愛着の持てる物件作りを検討してみてはいかがだろうか?






shop info:1992年のオープン以来、建材、タイル、塗料、家具など世界各国から集めたインテリア、マテリアルを販売。古材を使用したオーダー家具やフレーム、店舗什器の製作なども積極的に行う。世田谷、厚木、門前仲町の実店舗の他にオンラインショップも運営
http://www.thegallup.com/




text by Takuo Shibasaki (butterflytools)






























profile:1974年生まれ。厚木ショールームのマネージャーを務める木材のスペシャリスト。店舗内装の素材選びやイメージを作りに定評があり、アパレルショップからの信頼も厚い




















※ 『居住空間の匠たち』と題したこの連載では、賃貸物件オーナーに向けて、"新しい賃貸物件のカタチ"を提案するデザイナー、職人たちを紹介していきます。

※ GALLUPへの依頼のご相談は、株式会社宅建 担当:阪本幸徳までお問い合わせ下さい。

text by Takuken Web